「スタンス」の定義:
杖・松葉杖が使用されるために、「スタンスをとる」という動作についての見直しが必要となってくる。動かせない障害物(規則24−2)や異常なコースの状態(規則25−1)からの救済を受けられるかどうかにスタンスは重大な関り合いがあり、またプレーヤーの球がストロークを行なう前に動いたような場合、それがスタンスをとる前であったか後であったかはプレーヤーが罰を受けるかどうかの極め手となる。そこで、次のような定義を設けることを勧める。
『スタンス:
杖・松葉杖使用者については、プレーヤーがストロークを行なおうとして杖・松葉杖と(足が備わっている場合は)足の位置を定めた時に、そのプレーヤーは「スタンス」をとったものとする。杖・松葉杖はプレーヤーのスタンスの一部とみなされる。』
規則6−4(キャディ):
裁定6−4/4.5より類推し、プレーヤーの球を、そのプレーヤーに代わって、他のプレーヤーやそのキャディが回収しても、その人はプレーヤーのキャディとして行動したことにはならない。そのような行為は、プレーヤーは同時に複数のキャディを使ってはならない(違反すれば競技失格)という規則6−4の違反とはならない。
規則13−2(球のライや、意図するスイングの区域、プレーの線の改善):
「スタンスを公正にとる」とは? それをどう解釈するかはゴルフの中でも最も難しい判断を要することの一つである。ゴルフ規則の殆どは客観的であるが、この規則13−2は非常に主観的なものである。裁定13−2/1(「スタンスを公正にとる」とは)は、この語句の意味をある程度明らかにしているが、しかしまだグレイエヤリアをかなり残している。杖・松葉杖使用者が公正なスタンスをとるために木やかん木の枝を曲げることは認められており、折ったりすることさえ認められている。しかしながら、そうしないと自分の意図するスイングの区域やプレーの線の邪魔になる木やかん木の枝を故意に後ろに押しやるために、杖や松葉杖を使ってはならない。規則13−2の解釈に必要な判断基準としては、現在のところ裁定13−2/1に代わるものはないし、また今後も恐らく見当たらないことであろう。
規則T3−3(スタンスの場所を作る):
障害者が杖や松葉杖を使うことは、規則T3−3にいうところの「スタンスの場所を作る」ということには該当しない。
規則T3−3に関しての今一つの問題は、次のような疑問である。
「スイングする際に松葉杖がスリップしないようにスタンスを作ったら、そのプレーヤーは規則T3−3の違反となるのだろうか?」
その答えもまた「スタンスを公正にとる」(規則T3−2)いうことに関わってくるので、興味深い質問である。
松葉杖の先端を支えるために土を盛り上げたりなどして「スタンスの場所を作」ったりすれば、そのことによりそのプレーヤーは規則T3−3の違反となる。しかしながら、足を砂の中にある程度「めりこませること(”digginginII)」は許されていることから類推して、スリップ止めに杖や松葉杖をある程度土の中に「めりこませること(一一diggingin”)」は許されよう。ただし、それも度を越すと「スタンスを公正にとる」ということの違反となる。 では、どの程度までなら良いかということは、先にも述べたように、あらゆる情況を考慮に入れ、努めて客観的に、委員会が決断しなければならないことである。
規則13−4a.(ハザードの状態のテスト)と規則13−4b.(ハザード内の地面に触れる):
裁定13−4/22(バンカーからプレーする前に、レーキを持って入って砂に突き刺す)から類推して、障害者が杖や松葉杖をついてバンカー内に入った場合、そのプレーヤーはハザードの状態をテストしたことになり、したがって罰を受ける、と主張される方もおられることと思う。しかしながら、裁定13−4/22は、プレーヤーが球の所に行ってスタンスをとろうとすることに伴って必要な行為は別として、それ以外の行為を通してハザードの状態についての追加知識を得ようとしてはならないということを明らかにしようとしたものである。したがって、障害者が杖や松葉杖をついてバンカー内に入っても、ハザードの状態をテストしようとして入って行ったのでなければ、そのプレーヤーは規則13−4a.や規則13−4b.の違反にはならない。
規則14−2(援助):
ストロークを行なう前であれば、障害者がストロークを行なうために自分自身や使用している補助器具をセットしようとする際に物理的に援助を受けることは、誰からであろうと構わない。
規則14−3(人工の装置と異常な用具):
杖や松葉杖は規則14−3にいうところの人工の装置や異常な用具に該当する。にもかかわらず、委員会は障害者にそのような補助器具の使用を、たとえゴルフをする上でプレーヤーの助けとなるように改造されていたとしても、許すことができる。しかしながら、そのような改造された杖や松葉杖が他のプレーヤーに比較しプレーヤーに不当に有利に働いているとの心証を委員会が得たときは、委員会は規則14−3に基づいてその使用を禁止する権限を持つ。
規則16−1e.(パットの線を跨いだり踏んで立つ):
上述のようなスタンスの定義を設けることに伴い、規則16−1e.も次のように修正することを勧める。
『e.パットの線を跨いだり踏んで立つ
グリーン上では、プレーヤーはパットの線やその球の後方延長線を跨ぐようなスタンスをとったり、どちらかの足か杖・松葉杖がそれを踏む形でストロークを行なってはならない。』
規則17−3b.(球が旗竿や旗竿に付き添っている者に当たった場合):
プレーヤーの指示を受けて(またはプレーヤーも承知の上で)ある人が旗竿に付き添っていた場合、その人が付けている杖や松葉杖にプレーヤーの球が当たった場合、そのプレーヤーは規則17−3の違反により2罰打付加となる。このことは規則17−3b.の文言からも明らかである。
規則20−1(球の拾い上げ):
次の「W.皐いす使用者」を参照。
規則22(プレーの妨げや援助になる球):
次の「TX.草いす使用者」を参照。
規則24−2(動かせない障害物)と規則25−1(異常なコースの状態):
「スタンス」の定義の修正により、プレーヤーがスタンスを正しくとる際に、動かせない障害物や異常なコースの状態のためにプレーヤーが杖や松葉杖を望む位置に据えるのに妨げとなるようであれば、プレーヤーはそのような動かせない障害物や異常なコースの状態からの救済を受けられることとなる。しかしながら、必要とするショットを行なうにしては余りにも異常な位置にプレーヤーが杖や松葉杖を据えたり、あるいは不必要に異常なプレーの方向をとったためにその障害物や異常なコースの状態がプレーの妨げとなる場合には、規則24と25の両規則の例外により、そのプレーヤーが救済を受けることは認められない。
規則28(アンプレヤプルの球):
他の健常者ならアンプレヤプルと宣言したかも知れないような球を、ある健常者がその球に挑戦して見事に打ってのけるといったことは、事実、ありうることである。そしてまた、健常者ならプレーできる球でも、場合によっては、杖・松葉杖使用者ではその球をストロークすることができないことがあるということも事実である。例えば、松葉杖を使用しているプレーヤーは、急斜面の、しかも濡れている草の上にある球を、無理に打ちに行って倒れで怪我をするようなことを避けるためにも、アンプレヤプルを宣言することが必要かも知れない。しかしながらそれは、例えば健常者である二人のゴルファーの球がコースと不可分の部分と指定されている砂利道の上にあり、一人はストロークを行なったが、他の一人は球を打ったときに砂利が飛んで怪我をする危険を避けてアンプレヤプルを宣言したというようなケースと、さしたる変わりはない。
上の二つのケニスはどちらも危険を秘めている点では同じなので、裁定1−4/10(危険な状況:ガラガラ蛇や蜂がプレーを妨げる)を適用し、その裁定にも示されているように、プレーヤーは罰なしに救済を認められるべきであるとの意見もあろう。確かに、この二つのケースは危険な面を秘めてはいるが、情況も回答も裁定1−4/10とは異なっている。裁定1−4/10は、プレーヤーとしてはどうすることもできない、しかもコース上では通常見かけられないような危険にプレーヤーが出くわしたケースである。
終わりに一言付言すると、問題のストロークを行なうことによって危険に身をさらすことになるかどうかは、プレーヤー各自が最善の判断を下して自分で決めなければならないことなのである。もし危険に身をさらすことになるということであれば、最善の選択肢はアンプレヤプルを宣言することであるかも知れない。規則28はそのような情況の場合を扱う規則である訳で、怪我をする可能性がある場合はどのようなケースでも罰なしに救済を与えることにすると、乱用される危険も十分あり、収拾の付かないようなことになりかねない。