ブラインドゴルフのルール


◇W.車いす使用者

「スタンス」の定義:
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則1−2(球に影響を及ぼす行動)、規則13−1(球はあるがままの状態でプレー)、規則18−2a.(止まっている球がプレーヤーによって動かされる)
車いすに乗ってプレーするゴルファーの間では、「バンビング」(”bumping”)と呼ばれている行為がかなり以前から行なわれてきているが、それは、ストロークを行なう前に、球をスタンスの巾の中に納めやすくするために、アドレスの際に球を後ろからコツンコツンと叩いて少し前に押しやるというもので、車いすを正確にセットしなくても済むことからプレーのペースを早める上に、芝の傷みも減らせるというようなことが、このような慣行を正当化するための口実となっている。
プレーのペースを早めながら、しかも芝の傷みもを少なくて済む。それは誰もが望むところである。したがって、バンビング支持論もメリットなしとはしないが、そのような行為は「球はあるがままにプレー」というゴルフゲームの二大原則の一つに背くものである。
「バンビング」を許すような条文を作ることは、易しそうに見えて実は非常に難しい。 例えば、どのような方法でなら球を「バンプ」(”bump”)しても良いのか? どれぐらいの距離なら「バンプ」して球を動かしても良いのか?「バンプ」された球はどの時点でインプレーに戻るのか?「バンプ」された後で球が動いた場合、その球はリプレースしなければならないのか、それともあるがままにプレーしなければならないのか、あるいはもう一度「バンプ」して元に戻すことができるのか?また、そのような場合の罰はどうなるのか? ティインググラウンドで「バンプ」した場合、その球はティインググラウンド上に留まっていなければならないというように、同じ扱いの場所(規則の上ではティインググラウンドとスルーザグリーン、ハザード、それにグリーンの四つに区分されている。)に残っていなければならないのか? もしそうだとすれば、スルーザグリーンで数インチだけ「バンプ」しようとしているプレーヤーは、深いラフから浅いラフやフェーウェ一に球を動かしていっても良いのか? 初めの球がディボット跡に止まっていた場合、プレーヤーは「バンプ」してその球をディボット跡から出しても良いのか? などなどと疑問が次々と出てくる。
最後から二つ目の疑問については、ラウンド中の非常に重要な局面にさしかかっている場合、草が伸びている所から伸びていない所に球を動かして持って行く機会に恵まれたプレーヤーは、草が伸びていない所から伸びている所に球を動かして行かなければならない状況のプレーヤーよりも、串いすを望ましい位置に正確にセットするのに手間がかからずに済む筈、というのが論理的な結論となりそうである。
終わりに一言。「バンビング」は決して好ましいことではないが、「プリファードライ」同様に、今や一つの認められた慣行となってきている。したがって、リクリエイションのためにゴルフをしていようと競技に参加してゴルフをしていようと、とにかくゴルフ規則を厳格に守り、また規則が厳格に適用されているゴルファーと、「バンビング」を習性としている人との間に大きな開きが現にできており、放置すればその状態は今後も続くだろうということに思いを致し、「バンビング」の慣行を無くすように持って行くべきである。
規則6−4(キャディ)
この項については、前の「V.杖・松葉杖使用者」を併照頂きたい。
一言付け加えるとすれば、車いす使用者は、キャディの外に付添い者(”aide”)りを付けることができるということである。 ただし、その付添い者はプレーヤーのクラブを持ち運んだり、クラブに触れたりなどしてはならない(次のアドバイスの項を参照)。付添いの責務に応じて、その規則上の扱いを明確にしておくことが必要である(「T.視覚障害者」の「介添え者」の項と、「X.知的障害者」の「介助者」の項を参照)。
規則8−1(アドバイス)
幸いす使用者がキャディと付添い者の双方を付けるときは、付添い者はプレーヤーにアドバイスを与えてはならない。
規則13−2(球のライや、意図するスイングの区域、プレーの線の改善)
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則13−3(スタンスの場所を作る).
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則14−2(物理的援助)
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則14−3(人工の装置と異常な用具)
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則16−1e.(パットの線を跨いだり踏んで立つ)
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則17−3b.(球が旗や旗竿に付き添った者に当たる)
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則20−1(球の拾い上げ)
規則20−1はその中で次のように規定している。
『規則に基づいて球を拾い上げたり球の位置をマークする過程で球やボールマーカーが偶然に動かされた場合、その球やボールマーカーはリプレースしなければならない。球やボールマーカーの動いた原因が球の位置をマークしたり、球を拾い上げる行為そのものに直接的に結びつけられる七きは無罰とするが、それ以外のときは、プレーヤーは本項かまたは第18条第2項aに基づいて1罰打を付加するものとする。』
規則20−1は障害者用に特に修正の必要はないが、身体が不自由なためとか補助用器具(特に車)が原因で球へ近づくことが制限を受ける場合もあるので、障害者が球の位置をマークしたり、球を拾い上げる行為そのものに「直接的に結びつけられる」かどうかが問題になったときは、そのゴルファーに有利に計らえるように、規則20−1を多少緩やかに解釈してあげるべきである。
規則20−2a.(ドロップと再ドロップ:ドロップする人と方法)
健常者とのバランスをなるべく保とうとして、串いす使用者に、球を頭よりも高く持ってドロップさせたり、立つことができたとしたら肩の高さに当たるぐらいの高さに球を放り上げさせたりなどするよりも、むしろ規則20−2
a.を次のように修正することを勧める。
『20−2.ドロップと再ドロップ
a.ドロップする人と方法
規則に基づいてドロップを要する球は、プレーヤー自身がドロップしなければならない。プレーヤーは立つかいすに掛けて背筋を真っ直ぐにし、球を肩の高さに持って伸ばし、ドロップしなければならない。 他の者が球をドロップしたり、球が他の方法でドロップされた場合、その誤りを第20条第6項の規定どおりに訂正しなかったときは、プレーヤーは1罰打付加とする。』
規則20−3(プレースとリプレース)
プレーヤーは他の人に頼んで自分の球を回収しに行ってもらったり拾い上げてもらうことができるが、規則に基づいて球をプレースできるのはプレーヤーかそのパートナーだけである。身体が不自由であるだけに、串いす使用者が球を規則20−3a.に規定されているとおりにプレースすることは難しく、人によっては不可能であるかも知れない。この間題の解決策を見い出すことは決して簡単なことではない。他の人に頼んで球をプレースしてもらうことにしてはどうかとか、球をほんの数インチだけドロップということでも構わないから、とにかく形だけでもプレーヤーにプレースをやってもらうことにしてはどうかなど色々と案もあるが、むしろ、この間題が現実に解決を迫られるほどの問題となるかどうか、今暫く静観する方が良いように思われる。
球のリプレースについては、あまり問題となるようなことはないように思われる。 というのは、規則20−3で、プレーヤーやそのパートナーばかりでなく、球を拾い上げた人もリプレースすることが許されているからである。
規則22(プレーの妨げや援助になる球)
草いす使用者は、グリーン面を少しでも傷めないようにとの配慮から、グリーン上の球を自分で拾い上げに行くことはしたくないと思っている傾きがある。しかし、この件は外見ほどには案ずる問題ではない。というのは、プレーヤーは他の人に頼んで自分の球をマークして拾い上げてもらうことができるからである。また、1単位当たりの荷重を最小限にしようとして串いすなどの改良が進められてきていることも、この間題についての懸念を無くすことに役立っている。
規則24−2(動かせない障害物)と規則25−1
(異常なコースの状態)
前の「V.杖・松葉杖使用者」を参照。
規則28(アンプレヤプルの球)
この項については、前の「V.杖・松葉杖使用者を併照頂きたい。
明らかに、規則28についての最も重要な問題と言えば、車いす使用者の球がバンカーの中に入っていてその球の所まで行けない場合に、この規則28をそのようなゴルファーにどう適用すべきかということであろう。 現在のところ、串いすを使用しているゴルファーは自分の球をバンカーのへり近くまで持ってきてもらって罰なしにその球をプレーしたり、1罰打を加えてそのバンカーの外側にドロップするなどの処置がとられているようである。
この処置は、しかし、全く不公平と思われるような結果を生み出している。例えば、競技で、二人の串いす使用者の球がどちらも同じバンカーに入って止まっていたというようなケースを考えてみよう。一方の球はプレーでき、他方の球は本当にプレーできないアンプレヤプルな状況の場合でも、二人のプレーヤーは同じ扱いを受けることになる。 この場合、誰が見ても、プレーできない状況の方の球のプレーヤーが有利なことは決定的であろう。
このケースについての対処案を持ち出す前に、前とはまた適った意味で不公平とも思われるようなケースをもう一つ検討して頂かなければならない。そこで、健常者のストロークした球がバンカー内に入って止まった場合にそのプレーヤーがとることのできる選択肢を考えてみよう。先ず、その球をあるがままにプレーすることができる。その他にもプレーヤーがその球をアンプレヤプルと決めた場合が考えられる。その場合は、プレーヤーは1罰打を加えた上、次の三つの処置の中のどれかをとらなければならない。
a.プレーヤーがその球を最後にプレーした所のできるだけ近くで、球をプレー。b.その球の止まっていた箇所から2クラブレングス以内で、しかもホールに近づかない所に、球をドロップ
c.ホールと、その球の止まっていた箇所を結んだ線上で、その箇所よりも後方に、球をドロップ。この場合、球の止まっていた箇所よりも後方であれば、いくら離れても距離に制限はない。
アンプレヤプルの球がバンカー内にある場合、プレーヤーは前記のa.かb.,c.に基づいて処置することができ、プレーヤーがb.かc.の処置を選んだときは、球はそのバンカー内にドロップしなければならない。
したがって、健常者もバンカーの外からストロークを行なうことができるが、しかし、バンカーのすぐ外側に球をドロップするのではなく、その球を最後にプレーした場所まで戻らなければならないので、時には、フルショットしなければそのバンカーには届かないほど後戻りしなければならないことがある。すなわち、2罰打に相当するような、全くもって不公平なこともある訳である。その結果、このような場合、健常者と幸いす使用者との競技では逆に不公平さは一層拡がりさえする。
はじめにも述べたように、健常者と障害者が競技で対等にプレーできるようにするということが最終目標である。そのことを念頭に置いて、規則28の文言を次のように修正することを勧める。『バンカー内の自分の球をアンプレヤプルと決めた場合、陸豊畳は、次の処置の中のどれかをとらなければならない。
a.規則28 a.かb.,c.の処置
b.更に1罰打を追加し、そのバンカーの外側の場所
で、ホールと、球が止まっていた箇所を結んだ線上
に、球をドロップ。』
このような規則28の文言の修正は、串いす使用者が抱えているバンカー問題の対応に根拠を与えることになるであろうが、反面で、この文言が最終的に採用された場合には、いくつかの重要なハンディキャップの問題が取り上げられることになるであろう。 ハンディキャップの問題については、このレポートの終わりの方で、もっと具体的に述べることとしたい。